近時の新聞やテレビを見ていると、少しづつ民泊サービスを取り巻く環境にも変化が生まれようとしている(?)ように見受けられますが、そうでしょうか?

東京都大田区で特区民泊の申請受付が始まってから、間もなく2ヶ月が経ちますが、申請件数は伸び悩んでおります。

お会いした方から「大田区の民泊規制だと、誰もやらないよ!」というご意見をよくお聞きますが、 個人的な意見としては、ちょっと違っております。

シティホテルで働いていた時の知識や経験を元に、どのようにしたら合法民泊がうまく運営できるのかを検討してみました。

まず第一に取り組んでいただきたいのが、違法民泊の排除です。

近隣住民からの苦情、ゴミの問題などは、違法民泊が野放しになっているから起こっているのです。
解決するには、地域(町内会単位)での取り組みが必要です。町内会で情報を共有し、違法民泊らしき居室を見つけたら、行政に通報する体制を整える。

行政側も『違法民泊受付窓口』を設置し、区民からの通報を元に、厳しく取り締まるしくみを構築すべきです。

次に、「外国人滞在期間が、7日間以上というのは不利であり、実用的ではない」という問題です。

滞在期間を7日間とした理由として、感染症等に感染した際に発症するまでの期間が約1週間、近隣住民への配慮から頻繁に外国人が出入りするのを防ぐため等と書かれた記事を見たことがあります。

これらが本当なのかは定かではありませんが、
もし滞在が1泊~2泊と仮定すると、1ヶ月に15~30組のチェックインとチェックアウトが繰り返され、「施設の使い方(コンロやお風呂の沸かし方)が分からない」、「電球の球が切れた。電気がつかない」、「鍵を無くして入れない」、施設の備品(ドライヤ等)が盗まれた(現在のホテルでも多数発生)など、月に15~30回の確率で対応やトラブルが発生します。

しかし、7日間の滞在とすると、1ヶ月に4回しかチェックインとチェックアウトは生じず、トラブルの発生確率も下がります。つまり、運営側の視点に立つと長期滞在の方が運営しやすいと思われます。

では、滞在者側はどうでしょうか?
確かに、1ヵ所に7日間も滞在する外国人旅行者は少ない。
しかし、拠点を大田区の宿にして箱根や熱海温泉、京都や北海道などの小旅行に行けます。大きなスーツケースは大田区の宿に置いたまま、手軽に旅が楽しめます。
羽田空港の深夜便を利用する人にとっても、レイトチェックアウトのサービスがあれば嬉しい限りです。

では、「どのくらいニーズがあるのか?」ですが、団体ツアー客よりは、個人旅行でしょう。
極上の日本の暮らしを体験したいカップルや家族(4~5人)や、障害者(ハンディーキャップ)用にリフォームされた施設のニーズは、十分に見込まれると思います。

ハンディーキャプ仕様に設計されたトイレやバスがあるホテルは少ないため、ニーズはあると思います。
ハンディーキャップ仕様の民泊施設が増えると、パラリンピック時にも十分利用が見込まれますし、パラリンピックの後は介護施設(在宅介護)としても転用可能です。
認定申請に「近隣住民への説明」が必要のため、共同住宅よりは戸建て住宅の方が良いでしょう。

運営面から検討すると、
大田区の特区民泊のガイドラインによると、対面(若しくは映像)での鍵の受け渡し、途中に「適切に施設を利用しているか?」の確認を要するとしています。

ここからは、個人的な意見になりますが、

1. 鍵の受け渡しは、絶対に対面。怪しいお客様は見た目で分かるようになります。悪用されたり、テロの温床にならないためにも対面で滞在者をよく見て(観察して)おく必要があります。

2. 初めて滞在先に入居する際には、係員の立ち合いのもと説明(室内利用方法、近くのコンビニや飲食店、日本の文化について等)があると、日本のおもてなしもPRできます。
⇨ 留学生アルバイト等を雇って自国の言葉で説明ができれば、トラブルも軽減できるはずです。

3. 滞在中の掃除は滞在者が行っても良いことになってますが、3~4日目あたりで清掃業者が施設利用のチェックも兼ねて客室清掃に入り、その際にごみを回収する方が良いでしょう。さらに、この清掃業者は、近所のおばさん達にパート勤務等でお願いすると効果的です。近隣で雇用が生まれます。滞在者の情報も得られます。

4. 不動産価値の下落防止
昨年、ネット系仲介サイトを利用した滞在者の子供がベランダから転落死する事故が発生しました。このような事故が起きると、マンション全体及びその付近の不動産価値は下がります。

民泊は、不特定多数の方が泊まるという事を忘れてはいけません。それでも民泊運営をするなら「十分な対策」を取らなければなりません。

対応する損害保険の加入もそうですが、オープンに人が対応するということも必要です。

やり方によっては町内(商店街)の活性化につながります。商店街ぐるみで興味を持って取り組んでいただくと、合法民泊が広がるのではないでしょうか?

政府には、このような合法民泊を後押しするに当たり、施設投資に必要な資金面でも補助金や助成金を検討していただきたいものです。